関大映研のブログ

ようこそ関西大学映画研究部のブログへ

KFC Diary

Filmmaking is our Blood

映像

こんばんは、三回生の小幡です。


突然ですが、今日はある大学の映画研究部の話をしたいと思います。




 かなり昔の話です。その大学の映画研究部も、僕らの映画研究部と同じように、自分たちで映画を撮って、年に何回か

上映会をやっていました。何分昔のことなんで、彼らが撮影に使うカメラというのは、今みたいなデジタル式のカメラ

じゃなくて、古い8ミリフィルム式のカメラでした。だから、撮った映像はすぐに確認できず、フィルムを映写機にセッ

トすることで、記録した映像を見ることができるんですね。

 
 ある日、いつものように部員たちは映画の撮影を行っていました。その映画のジャンルは純愛もの。若い男女の淡く切

ない恋を描く物語でした。この日はラストシーン、作中の恋人役の女性が線路の高架下から歩いてくる様子を部員た

ちが撮影していました。女性は長い髪にスラっとした体形で背が高く、白いワンピースを着込んでいました。男との叶わ

なかった恋に涙ぐみながら、ゆっくりと歩く姿が哀愁漂うシーンです。

 
 無事にその日の撮影を終えた一行。大学に戻って来た彼らは、部室に行き今日撮影した映像の確認をします。ミスや撮

り忘れがないか入念にチェックする。一通り映像を確認し終わった後、部員の一人が首を傾げる。監督の部員がどうした

と尋ねると、最後に確認したラストのシーンに変なものが映っていたと言う。他の部員は気づいてないようでした。少し

戸惑いながらも、監督はもう一度映像の再生をしてみる。先程の部員が、ここだと指摘しました。ほんの一秒程であるが

それを確認することができた。線路の高架下、女性が歩いている後ろの右脇に薄暗いが人が立っているのが分かったんで

す。しかも、小学生ぐらいの少年のようでした。少年はこちらに背を向けていて、手前に向かって歩く女性と正反対の方

向を向いて立っている。ぞっとする部員たち。変なんですね。現場で撮影していた時は、こんな少年は全く見かけなかっ

た。いたとすれば、すぐ場にいた部員の誰かが気づくはず。それに、なぜこの一瞬だけ少年が写り込んでしまっているの

か。

 
 翌日、部長や他部員も呼んで、映像の確認をしてみる。もちろん、例のラストシーンをです。やはり、後を向いた少年

が写っていました。気のせいか、少年の首は前より少しだけ左側に向いているようだった。監督としては、重要なラスト

シーンなので何とかしたい気持ちでいっぱいでした。しかし、これだけのためにわざわざ撮り直すのも億劫です。部長や

他部員は、ひょっとして幽霊か何かじゃないかと、冷やかし半分に言ってきました。しかし、監督はその話を真に受け

ず、結局少年の写り込んでいる瞬間の部分をカットすることにしました。

 
 後日、映像を編集した監督は、再び映像の再生をして確認をする。そこで、ラストシーンに差し掛かった時、監督は思

わず声を上げてしまいました。同じ女性が歩くシーンに、あの少年がまたしても写っていたのです。さらに少年の首が、

以前より左側に傾いており、少年の眉の部分を確認することができる。一度、編集でカットしたはずの少年が写り、そし

て更に不可解なのが、その映像の中で動いているということだ。

 
 監督は再び部長や他部員たちに映像を見せました。そして、あることに気がつきました。どうやらこの少年、カットで

きないだけでなく、映像を再生する度に首がほんの少しずつであるが、こちらに向こうとしているのです。映像には、少

年の眉と口元まで写るようになっており、それを見る限り、少年は笑っているようでした。

部員の一人がこう言いました。

「こいつが、もしこっちを向いたら、何か、よくない事が起きる気がする……」






それっきり、その映画研究部は部室の奥にこのフィルムを保管し、今もまだ残っているんだそうです。