関大映研のブログ

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KFC Diary

Filmmaking is our Blood

『サスペリア』(2019)みたよっ!

お久しぶりです。映画研究部の山中です。

ついに公開されましたよ!ルカ版『サスペリア』!もうこれね、去年の夏休み前くらいにティザー画像がでたときからね楽しみにしてたんです。その画像がこれなんですが、もうたまらん…

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出典:https://img.dmenumedia.jp/movie/wp-content/uploads/2019/01/suspiria_sub2.jpg

赤い紐で緊縛されたお嬢たちが、暗闇の中で異様なポージングでたたずむこのエロ・ミステリアス・シュールな画像に脳天をブチ抜かれて一目惚れしたんです。それでこれを見た時から『サスペリア』を見るために生きてきました。

それで私はもう二回見たんですが、ほんとに凄まじいよこの映画!エログロなヴィジュアルもさることながらストーリーも作りこまれてて、山中ランキングでは『マンディ』同様、殿堂入りを果たしました!おめでとう!

ということで、今回は『サスペリア』(2019)を紹介していきます!

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出典:https://news.walkerplus.com/article/172806/1016594_615.jpg

ふたつの『サスペリア

おいっ、「ふたつの」ってことは、この作品オリジナルじゃねーのか?と疑問に思った皆さん、そうなんです。これはダリオ・アルジェントというオッちゃんが1977年に撮ったサスペリアのリメイク作品なんです。で、誰がリメイクしたのかってゆうと、キヨ様が去年のベストに挙げていた君の名前で僕を呼んでルカ・グァダニーノ監督です。『君僕』は私もベスト1に挙げさせてもらいましたが、『サスペリア』でもやってくれましたよ。もうルカさん大好き。

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出典:http://3.bp.blogspot.com/-UfUbgBnAmEo/US5bLt10EFI/AAAAAAAAPcs/EaKhWGphgQ0/s1600/suspiria_poster_09.jpg

ダリオ版『サスペリア

当時のイタリアではスプラッター映画ブームが巻き起こっていて、イタリア産のグロ映画を「ジャッロ」と呼ぶんですが、そのジャンルの中でもダリオ・アルジェントは結構評価の高い人で、サスペリア』は彼の代表作となっています。

ダリオ版『サスペリア』は、ドイツのバレエ学校に潜む魔女を描いたイタリア産のホラー映画で、激しい原色を用いたライティング残酷なスプラッター描写が評判を呼びました。あと、主人公におメメパッチリ美少女のジェシカ・ハーパーが抜擢され、当時の中学生は怖いもの見たさと美女見たさで映画館に駆け込んだらしいです。

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そして、ロックバンド「Goblin」が手掛けたBGMも話題になりました。サスペリア』以前のホラー映画って弦楽器の金切り音とかクラシック系のBGMしかなかったんですが、ロックと民族楽器を融合させた奇抜な音楽を使って高い評価を受けました。一番有名なのが『witch』という音楽なんですが聴いてみてください!こわ気持ち悪いですよ。


Goblin - Witch

ダリオ版 vs ルカぺリア

めちゃくちゃ評価の高いダリオ版をリメイクするということで、どうなることやらと映画ファンたちは期待と不安を胸にこの作品を心待ちにしていたようですが、評価は真っ二つに割れました。というのも『ルカぺリア』はダリオ版とは物語構成、演出面共に全く別物になっちゃてるんですね。それでオリジナルファンやホラー映画ファンの中に激怒する人が出てきちゃったんです。ちなみに、ダリオさん本人も『ルカぺリア』はアカン!と激おこのようです…
www.moviecollection.jp

『ルカぺリア』は、オリジナルの土台に政治的要素を絡めた非常に複雑で難解な物語構成で、それに合わせるためにライティングや音楽などの演出面も全く別物になってます。150分超えの長尺もあり、簡単なストーリーでグロ描写をパパっと楽しむというホラー映画のジャンルそのものをぶち壊しにかかってるんですよ。そりゃ、ブチ切れる人も当然いますよ。

ただ、評価の高いオリジナル版をただ真似して金儲けを企む作品が多くある中で、オリジナルの簡略な物語と恐怖演出のすべてに意味を与え、自身の解釈として新しいものを作り上げたルカさんは凄いことを成し遂げたといえます。

サスペリア』:三つのテーマ

ルカ版は政治的要素が絡んで難解と言いましたが、これだけ押さえとけば大体わかるという三つのテーマを紹介します!

1.1977年のベルリン

ルカぺリアの舞台となるのが、ダリオ版が公開された年でもある1977年のベルリンです。当時のベルリンは冷戦下にあり、「壁」によって西と東に分断されており、魔女たちが潜むダンス学校は「壁」の目の前にあります。政治もナチス時代の残党が仕切っていて、それに不満をもった民衆が過激派「ドイツ赤軍となりテロを起こしまくっている混沌とした状況です。あと「壁」と言えば、トランプさんですね。ルカさんは『サスペリア』を今だから見てほしい映画と言ってます。

www.huffingtonpost.jp

バーダーとマインホフ

オープニングでラジオから「バーダー・マインホフがどやこや」と流れてくるんですが、バーダーさんマインホフさん「ドイツ赤軍」のリーダー的存在であり、政府は彼らの影響を恐れて、監獄に収監しています。んで彼らの解放を求めて「ドイツ赤軍」が飛行機をハイジャックして政府を脅迫します。これが「ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件」という実際にあった事件なんですが、ルカぺリアの物語の裏で同時に起こっているという設定になってます。

blog.goo.ne.jp

この事件は失敗に終わるんですが、その後、バーダーとマインホフらをはじめとする「ドイツ赤軍」のリーダー組は監獄の中で集団自殺します。「ドイツ赤軍」はカルト集団みたいな位置づけであり、それに魔女楽団が形容されてます。

ヨーゼフ・クレンペラー

ヨーゼフ・クレンペラーさんは、この作品でキーパーソンになる心理療法師のお爺ちゃんです。これには元ネタがあって、ナチスを生き抜いたヴィクトール・クレンペラーという人が基になってます。で、ヨーゼフさんにはアンケという愛妻ジェシカ・ハーパーが演じてます)がいたんですが、その愛はナチスによって分断されてしまいます。彼はお爺さんになってからも壁の間を行き来して、かつて二人で住んでいた家に行って思い出にふけっています。また、彼が心理療法師として「舞踏団は人々に幻覚をみせている。」と魔女の存在を否定しているのも重要です。

www.amazon.co.jp

2.魔女伝承

サスペリア』で切っても切り離せないのが「魔女」です。ドイツの舞踏団にアメリカからやってきたスージーちゃんが、魔女の存在に気付くという物語(めちゃ適当)なんで当然ですね。

それで、これほんと偶然なんですけど、『マザー』とか『聖なる鹿殺し』とか見て聖書とギリシャ神話について学びたくなって秋学期に適当にとったキリスト教思想研究b」てゆう授業で魔女伝承について深く学べたんです!最初のガイダンスで魔女についてやるってなったとき何か縁を感じましたよ。

syllabus3.jm.kansai-u.ac.jp

魔女ってなに

はい、魔女ってゆうのはキリスト教が始まる前にあった様々な神さま信仰から生まれました。そこでは畑の豊作や健康を祈るために、畑の神様や健康の神様を祭って踊る儀式をしたり、病気を治すために漢方を作ったりしてました。しかし、キリスト教が始まると「イエス様だけが神様で他はダメ!」、「病気もイエス様が治す!」ってなって儀式とか漢方とか禁止されました。それでも森の奥とかで隠れて儀式とかをしてた人々を「魔女」とよんだんです。

とまあ「魔女」とキリスト教は深い関わりがあるんですが、主人公のスージーちゃんはキリスト教のなかでも特に厳格で質素な暮らしを重んじるアーミッシュメノナイト派の家の生まれです。けれどスージーちゃんは、ドイツの舞踏団のことばっかり考えて、勉学を軽んじたり、タンスに隠れてお股をまさぐったりする生粋の不良少女なんです。それでお母さんに「あんたを生んだことが私の罪」ってゆわれちゃうんです。ちなみに、スージーちゃんがドイツの駅で握りしめていたお金はメノナイト派の教会から盗んだものです。

dte-amish.com

魔女裁判

あと、魔女裁判って一度は聞いたことあると思うんですけど、これは16世紀から17世紀に西洋で盛んに行われた迫害のことです。当時の人々は、村で不作が起こったり、身の回りに不幸が起こると、怪しい人を「魔女」と認定し、彼らをスケープゴートとして拷問して殺したんです。(魔女には男性も含まれます)これの延長線上にあるのがヒトラーさん率いるナチスユダヤ人大虐殺です。

www.y-history.net

魔女のサバト

サバトってゆうのは魔女たちの集会のことで、森の奥で全裸で踊って儀式したり、赤子の人肉をすり潰して漢方薬を作ったりします。もちろんこれはファンタジーですよ。『サスペリア』では音楽学校の中に魔女が大勢いるんですが、彼女たちは現代風にファミレスで集会してましたよw

m34tanaka.jimdo.com

3.ダンス

サスペリア』では、新旧どちらも「ダンス」がキーになってます。ベルリンを拠点とする舞踏団(マルコス・ダンス・カンパニー)が舞台なので、当然ダンスが重要になります。んでダリオ版のダンスはクラシックバレエだったんですが、今回は「ノイエ・タンツ」(ニューダンス)というダンスが採用されています。これ日本では暗黒舞踏と言われるんですが、力強く、グロテスクな動きが特徴的です。本作ではダンスが殺しの凶器として使われるのも特徴です。

youtu.be

 

マリー・ウィグマンとピナ・バウシュ

ドイツで「ノイエ・タンツ」を始めたのが、マリー・ウィグマンという人なんですが、この人の舞踏団がマルコス・ダンス・カンパニーの元ネタです。また、鬼教官マダム・ブランの元ネタは、ドイツのモダンダンサー、ピナ・バウシュという人で、ティルダ・スウィントンが演じてるんですが、見た目まんまです。

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出典:https://cdn-images-1.medium.com/max/1600/1*63B-47I7So_7z4cv-eDIcQ.jpeg

マリー・ウィグマンの代表作が『魔女のダンス』んでピナ・バウシュメデューサってゆうダンスが、劇中に披露される『民族』という演目の元ネタです。見てもらえばわかるんですが力強くて、グロテスクでバレエとはかけ離れた印象ですよね。


Mary Wigman, Hexentanz


Les Médusées // Trio féminin s'inspirant de la nature ensorceleuse des nymphes de Marly

ダンスとフェミニズム

ダリオ版は、クラシック・バレエでかよわい少女たちを表現しましたが、ルカ版では「暗黒舞踏」で力強い女性を表現してます。スージーちゃんを演じるダコタ・ジョンソンは、ムッチムチで健康的な体つきをしていてエロ…じゃなくて力強い印象です。また、今回の『サスペリア』ではほぼ女性しか出てきません。クレンペラー爺ちゃんもティルダ・スウィントンが演じてるので、これもう女性の映画なんです。

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出典:https://www.celebgossip.jp/wp-content/uploads/2019/01/Suspiria-1024x768.jpg
ナチスとダンス

ヒトラーは、絵画や肖像などの芸術作品は魔力的な力を持ってて統治の邪魔になるからとそれらを燃やしました。で、マリー・ウィグマンの舞踏団も「気持ち悪いダンスすな!」と潰されました。ナチスは魔女の存在に気づいてたんでしょうか…


www.hitlervspicasso-movie.com

はい、以上の点を抑えとけば、だいたい理解できます!多いわ!とツっこまれそうですが、『サスペリア』はめちゃややこしい映画なんで、その点でも評価が分かれたんだと思います。

サスペリア』感想

私はもう二回見たんですが、魔女伝承について学んでいたこともあり、初見でもなかなか楽しめました。それで興奮したんですが、この映画に『へレディタリー』っぽい演出とか設定があってニヤニヤが止まりませんでしたよ!ダンスによる殺しのシーンもドグシャアッって感じで楽しめましたね。

エンドロール後にある数秒のシーンが物議をかもしてるんですが、これはいろんな解釈ができます。複雑難解な物語構成もあって、見た後に語り合いたくなる映画なので、その点でも「決して一人では見ないでください。」です。

とまぁ、長々と書かせてもらいましたが、読んでくれてありがとうございます_(._.)_。ブログ書いてたらほんと時間が一瞬で過ぎますね…

最後に

これからは命を懸けるほど楽しみな映画はあんま無いですが、今年は『アベンジャーズ』やら『スターウォーズ』があるのでブログが流行りそうですね。それにしても2019年はディズニー祭りだワッショイワッショイですね。


theriver.jp

冬休みは、なんか映画作りたいですが、ネタが思いつきません。進行1年生組でなんか作りたいですねー。あと、ざっとんさんがやってたスタンプ作りとかもやってみたいです。

なにげにネトフリ上映会が一番楽しみです。あんな話題の映画がちっさい画面でしか見れないなんてほんとクソですよ。特にAAA級のネトフリ限定作品がタチ悪いですよね。新作が映画館で観れないなんて…『ROMA』くらい劇場でやってくれ!全然宣伝しないしこりゃダメです。モーグリ『ポーラー』『バードボックス』『バスターのバラード』…泣


media.netflix.com

ほんと最後ですが、なんか『ペニス映画闘争史』という講演会が元町映画館でやるらしく、行ってみたいですねー。ルカ版『サスペリア』もおちんちん映画だったんですよ。魔女のフック×おちんちんなシーンがあって笑いました。ちなみに、マイベストおちんちん映画はPTAのブギーナイツです。ありがとうございました。

 

『マザー・サスペリオルム万歳!』 

 

 

 

 

 

 

 

あけましておめでとうございます2019

新しい1年のスタートに合わせて、代替わりのご挨拶をさせていただこうと思い、ブログを更新いたしましたーーー!どうぞ最後までお付き合いください!

 

さて、我々関大映研、先月中旬より新体制での活動がスタートしております。

上映会の時期を変えてみたり、それを踏まえて年間予定を決めたり、と、少しずつではありますが、着実に動き出しております。何かを大きく変えたい!という野望はありませんが、関大映研の歴史に何かしらの爪痕を残すことができたらいいな、という思いを持って、1年間駆け抜けていくつもりです。今までの自由な雰囲気を受け継ぎつつも、映画を観たり作ったりできるシステムというか、体制というか、を作るのが目標。長いようで短い1年間、みんなで試行錯誤して、自分たちなりの正解にたどり着けたらなぁと思います!

 

と、申し遅れました、新部長の清武です。文学部映像文化専修の2回生です。東北の民です。好きな映画1位は『アバウト・タイム』…なのですが、昨年観た『ベティ・ブルー』や『君の名前で僕を呼んで』が良すぎたのでそろそろ順位が変わりそうです。俳優さんはCillian Murphy、音楽はKodalineが大好きです。趣味が合う人があまりいないので、「私もそれ好き!」って方は至急連絡ください。と、自己紹介はこれくらいにします。すいません。お陰様で部長として活動させていただくことになった、のではあるのですが、なんだかんだで不安しかありません。部員の皆さんはもちろん、先輩方、文化会の皆さんなどなど、たくさんの方にたくさん迷惑をかけると思いますが、一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!

 

ということで、関大映研も無事に新年を迎えることが出来ました。2019年もどうぞよろしくお願いいたします。

そのうち部員の2018年ベスト映画が発表されると思いますので、お楽しみに。

なんかいい画像がなかったので、去年のベスト映画のワンシーンを。

 

では! 

 

画像ーhttps://culturebox.francetvinfo.fr/cinema/sorties/call-me-by-your-name-un-film-sur-l-eclosion-du-desir-adolescent-269707

『へレディタリー/継承』見たよ。コッ!!!!!!!!!!!!!

はじめまして、映画研究部2年の山中です。

ブログを書くのは初めてですが、近頃、映研内でブログブームが到来しているようで、私も挑戦してみたいと思います。

 

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出典:https://twitter.com/hereditaryjp?s=03

『へレディタリー/継承』

今回紹介する作品は、私が今年最も楽しみにしていたホラー映画、『へレディタリー/継承』でございます。もう4月くらいに何やらとてつもなく怖い映画が公開するらしいという記事を読んでから、ずーっとずーーーーっと『へレディタリー』のために生きてきました。

 

そこまで、楽しみにしてたってことは、お前はよっぽどホラー映画が好きなんだと思われるかもしれませんが、私、大のオバケ嫌いでビビりです...はい。けれどもホラー映画って他ジャンルと違い、人を恐怖に陥れるために様々な工夫がなされていて、それがかっこよくて見てしまうんですよね...

 

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『Stand by Minohー継承ー』ポスターより


もう1つ、本作に注目していた理由があるのですが、私がこの夏休みに制作した映画、『Stand by Minoh-継承-』と『へレディタリー/継承』のサブタイトルが同じなんです!こんな偶然があってよいのでしょうか?『SbⅯ』の公開日11月1日『へレディタリー』の公開日が11月30日、はい、完全にやられました。パクられてしまったんです!悔しい!(実際は楽しみすぎて私がパクりました...)

 

<11月ホラー月間>

日本では長らくB級請負人だったニコラスケイジが最愛の妻を奪ったカルト集団をぶちのめす『マンディ 地獄のロードウォリアー』

www.finefilms.co.jp

どこか可愛げで哀愁のある幽霊のホラー?映画『ア・ゴースト・ストーリー』

www.ags-movie.jp

意味が分かると震えがとまらないサバイバルホラーイット・カムズ・アット・ナイト

gaga.ne.jp

人食い姉妹vs超クソガキの台湾映画『怪怪怪怪物』

www.shochiku.co.jp

今年の11月はホラー映画が熱く、その締めくくりとして、11月30日に『へレディタリー』が公開されるのです。私は全て制覇しましたが、断然『へレディタリー』が最恐で、最後にふさわしかったです。ちなみに『マンディ』は個人的に殿堂入りしました...

 

<今、最注目の映画制作&配給会社、A24>

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出典:https://www.youtube.com/watch?v=uCtPrrLqdRU&t=1s

11月ホラーの中で、『ア・ゴースト・ストーリー』、『イット・カムズ・アット・ナイト』、『へレディタリー』の3作品は全てA24という映画制作会社が制作、配給しています。

 

いったいA24の何が凄いのかと申しますと、この会社は、一風変わった、社会性の強い、カルト的な、趣向を凝らした、今風な映画というように、普通な映画とは一味も二味も違うような映画をバンバン輩出しており、世界中のシネフィルから今最も注目されている会社なんです

 

過去作にはラララとの激戦を制した『ムーンライト』、ブリラ大活躍の『ルーム』、今年カルト映画として話題になった『アンダー・ザ・シルバーレーク』など、確かに一風変わった映画ばかりですよね。他にもたくさんありますが、詳しくは下記のサイトで確認してください!

 

そして、『へレディタリー』はこのA24配給作品の中で歴代最高のオープニング興収を達成しています。やばいでしょ、もうパンドラの箱は開いちゃってんだょn......

www.google.co.jp

 

『へレディタリー/継承』感想

これ、見た直後に書いてますが、まだ震えが止まりません...やばいよ、怖すぎるよ!!!もう前情報で伏線がやばいとか評論家絶賛とかA24とかで空高く上がっておりましたハードルを火星経由くらいの余裕を持って飛び越してくれました。んとに凄まじい。

あらすじ

ネタばれ厳禁色が強いので詳しく内容をお伝え出来ませんが、あらすじとしては、祖母の死をきっかけに、死よりも残酷な運命と、想像を絶する恐怖が家族を襲う。といったところでしょうか。(パンフ丸パクリ)

 

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出典:https://www.imdb.com/title/tt5715874/mediaindex?page=4&ref_=ttmi_mi_sm

似ている作品としてはヨルゴス・ランティモス『聖なる鹿殺し』を思いつきました。この作品はギリシャ神話をもとにしたポストハウスアポカリプトホラーでしたが、『へレディタリー』も1700年代のヨーロッパ伝承に登場するぺイモンという悪魔の名が登場します。どこかキューブリック的な1点透視なショットの多様も両作に共通してると思います。

 

演出

最初から最後まで空間を舐めるように動くドリーショット奇妙な奥行きを生み出す1点透視図法など、的確に観客の不安を煽るカメラワーク

 

シンセサウザーのような機械的な音弦楽器の重低音を合わせた絶妙に気味の悪い音楽

 

ミニチュアと現実世界を繋げたり、夢と現実、昼と夜を瞬時に切り替えるというような映像トリックを作り出す編集

 

首ちょんぱっぱ見えそうで見えない少し見えるお婆コッ超絶こっくりっさん、などのホラー演出

 

そのどれもが凄まじく、画面にくぎ付けになるはずです。特に、一家の娘さんの「コッ」という口慣らし癖があるんですが、それがもうね半端なく怖いです。ほんとうにアイデアの勝利というか、普通に聞いたら何ともない「コッ」に何度も心臓をえぐりだされそうになるんですよ...

 

脚本、伏線

脚本もとてつもなく作りこまれており、祖母の死から闇にのまれていく一家の母、父、長男、長女の全員にフォーカスを当てていて誰が主人公かも分からず、それぞれに悩みを持たせることで全員に感情移入してしまう。

 

そしてタイトルの持つ意味は何なのか、いったい誰が何を継承するのか、一家に襲い掛かる絶望がそれを徐々に明るみにしていき、最後には衝撃の結末が待ち受ける。

 

本作は一度見ただけでは分からない伏線が多いと話題になっていますが、登場人物達の言葉を注意して聞いておくと最後にガッツポーズできるでしょう。アイテムではなくセリフの伏線がすさまじいです。

 

演技

演出も脚本も素晴らしいですが、本作をより高めているのが俳優の演技です。特に一家の母、アニー役のトニ・コレット長男ピーター役のアレックス・ウォルフです。

 

トニ・コレットは『シックスセンス』や『リトル・ミス・サンシャイン』で数々の賞にノミネートされた演技派女優で、本作でも祖母の死に翻弄され、一家に迫る災いに思い悩む一家の母を見事に演じています。彼女が叫ぶ姿にベストスクリーム女優賞を上げようという声もあるそうです。

 

アレックス・ウォルフ新『ジュマンジでロック様になってた子ですね。その時はあまり印象深くありませんでしたが、なにやらハリウッドで最も注目されている若手俳優の一人らしく、今回は本当に素晴らしかったです。『CMBYN』のシャラメ泣きに引けを取らない、ちょんぱっぱハンドル握り泣きや、顔面もぐらたたきを披露してくれました。

 

長女役のミリー・シャピロちゃんも凄かったですが、怖いので触れません。

 

<最後に>

いやーほんまに楽しめました『へレディタリー/継承』!と初ブログ

 

それにしても監督のアリ・アスターさん、これが長編デビュー作て...恐るべき才能の持ち主だと思います。しかも『へレディタリー』は自身の実体験をもとにしてるらしいです。何があったんやホンマ

そして、これからはサスペリアのために生きます。

gaga.ne.jp

 

えー、書いてたら夜が明けてしもたので、、別れのあいさつです。

 

「ぺイモン万歳!」「コッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ボヘミアン・ラプソディ その2

こんにちは、2回の清武です!

ダンケルクぶりの登場でございます、お久しぶりです。

 

さて、今回は題名の通り『ボヘミアン・ラプソディ』について書いていこうと思います。「この前も『ボヘミアン・ラプソディ』感想書いてたじゃないか!」と思ったそこのあなた、いつもブログ見ていただいてありがとうございます。そうなんです、映研ブログで扱うのは2回目。前回はてっちゃんがめちゃくちゃ素敵な文章を書いてくれました!必見!

が、私も書いてみたい!ということで。拙い文章ではありますが、最後までお付き合いください!

 

今回私は、TOHOシネマズ梅田のスクリーン1、ドルビーアトモス対応のスクリーンで観てきました。なんとなーく11月24日に行ってきたのですが、偶然にもフレディ・マーキュリーの命日だったようで、ほぼ満席に近い状態でした。

 

感想はずばり、「劇場でもう一回観たい…!」。映画館の大きなスクリーンで、大きな音で、Queenの音楽を楽しめる。もう、それだけで満足でした。今の時代、スマートフォンや家のテレビで簡単に映画を観ることができてしまいます。netflixamazon primeに関しては、ネット上でしか公開しないオリジナル作品もあり、「映画=映画館で観るもの」という方程式は崩れかけている、というかもはや崩れていると言えるのではないでしょうか。そんな時代に、この『ボヘミアン・ラプソディ』。スマホの画面の何倍もある映画館のスクリーンで映像を楽しみ、イヤホンとで聴くのとはわけが違う映画館の音響で、音が体に響くのを感じる。まるでQueenのライブ会場に来ているかのような臨場感。改めて、「映画館で映画を観ること」の価値を感じることができたように思います。だからと言って、netflixの映画や、家での映画鑑賞を否定するわけではなく。そこには映画館とは違った価値があるから、それに相応しい楽しみ方をすればいい。でも、たまには映画館に行って、映画を「体感」して、劇場内に広がる一体感を味わいたいなあ、なんてことを思いました。

 

恥ずかしながらQueenの楽曲は数曲しか知らなかったのですが、十二分に楽しむことができました。個人的には、曲ができていく過程のわくわく感がたまらなかったです。が、Queenのファンの人が観たら私の何倍も楽しめるんだろうなあ、と思うとちょっと悔しかったり。

 

と、まあ今回はこのくらいで。『ボヘミアン・ラプソディ』の魅力、映画館の魅力が少しでもお伝えできていれば幸いです。最後に一つ、この映画、猫好きの皆さんは必見です。

 

 

画像:https://www.foxmovies.com/movies/bohemian-rhapsody

映画観賞会『2001年 宇宙の旅』

どうも、お久しぶりです。

映画研究部2回生(年生)の大矢です。

「また、お前かよっ!」と思った方、前回も読んでいただきありがとうございます。

( ̄ー ̄ゞ

 

まぁ、そんなこんなで今回は11月1日に映研部員数人で行った

映画観賞会」について振り返ろうかと思います。


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まず、「映画観賞会とは何だ!」という方のために説明させていただきますと、、、

こちらは関西大学映画研究部の定期イベントの1つでして、1か月ないし2か月に一度、予定の合う部員で一緒に映画に行こうというイベントでございます!

 

2019年に新1回生になるみなさん!すごい楽しそうでしょ!

(この時期から来年の新入部員を増やそうとするスタイル。笑)

 

ちなみにこれまで、

『夜は短し、歩けよ乙女』や、

『スプリット』

ダンケルク』(IMAX)

オリエント急行殺人事件』に、

今年は

レッド・スパロー

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

犬ヶ島』などなど。

改めて見ると中々選りすぐりの作品を見てきました。

(思い出せば、新入生歓迎行事として見に行った『レッド・スパロー』は完全に事故物件でしたけどね、、、内容的に。笑)

 

と、このイベント、どうやって作品を選ぶかと言いますと、実はみんなで見たい作品を出しあって決める、超民主主義システムでございまして、そのため、今回も色々な候補が出ました。

 

アンダー・ザ・シルバーレイク

gaga.ne.jp

 『ヴェノム』

www.venom-movie.jp

 

search/サーチ

www.search-movie.jp

 

カメラを止めるな!

kametome.net

 

 『ジョニーイングリッシュ  アナログの逆襲』

johnnyenglish.jp

 

 

『GODZILA 星を喰う者』

godzilla-anime.com

 

クワイエット・プレイス

quietplace.jp

 

色々な意見が出ているなか、

満を持して、僕の案も出すことに...。

『2001年 宇宙の旅 IMAX版』

https://warnerbros.co.jp/home_entertainment/detail.php?title_id=2390

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出典:https://twitter.com/warnerjp/status/1042647832832827392


 

結局、最後は『search/サーチ』と『2001年 宇宙の旅 IMAX版』の一騎討ちになり、幸運なことに『2001年...』が選ばれることになったのでした!

 

ところで、なぜ、僕がこの作品を選んだのかと言いますと、それは2週間前の出来事まで遡ります... 。

『2001年 宇宙の旅』がIMAXで2週間限定で上映されていると知っていた僕は、「時間が空いている間にすぐ行かねば!」と決意し、夜勤バイト明けに観に行くことに...。

しかし、その結果、序盤爆睡。おまけに終盤のあるシーンでは、あまりにインパクトが強すぎて、体が至るところから震えだし、わりと本気で死を意識するという惨劇に...。笑

そういう事情もあって、今回は私的なリベンジの意味も込めて、本作を激推ししたのでした。笑

 

話は戻りまして、そんな本作。

これまでの説明からもお察しの通り、中々クセの強い作品でございまして、映画研究部の部員がどうリアクションするのかも楽しみな1作でもありました。

序盤数十分に渡り続く台詞のない猿たちの無駄なたわむれ、

謎に1つ1つのカットが長すぎる印象的なシーンの数々、

終盤に訪れる地獄のようなトリップ映像。

大学で授業を受け持ってくれている映画に詳しい先生は本作を

あのよく分からなくて何だか眠くなる映画」と答え、

我ら映画研究部顧問に話を聞いてみても、

若い頃に観て、現実と夢の世界をさまよっていた」と言った問題作。

 

しかも、そんな本作を学園祭上映会*1日目の終わりに観に行くという過酷スケジュールに映研部員はどうなったのか??

* 年に三回行われる関大映研による自主制作映画を上映するイベントの1つ。

 

それでは、感想に行ってみましょう!!

 

オープニングから、妙に心をかき乱される数分間の暗転で幕を開ける本作。

DVDやTVなどで見たことのある方は、このシーンにそこまでの意味を感じなかったかもしれませんが、さすがは音響抜群のIMAX

そこに広がる闇はまさに宇宙の闇。

とてつもない不安感を感じさせる不穏な音楽は、

まるで「宇宙に一人放り出されたような逃げ場のない孤独」を感じさせます。

 

さぁ、そして、物語は最初の難所、

もはや、ほぼサイレント映画といっても過言ではない

猿のたわむれパートへ‼

 

何度目かの鑑賞となる僕は、このシーンがのちの展開の大きな伏線となるシーンであるため、ひたすら生真面目に目を向けていました。

しかし、なにか、おかしい。。。

横で何か、むせび声が聞こえるのです。

不穏に思った僕は、横の横に座っていた後輩・小松の顔を見てみることに...。

すると、彼が自分の持ってきたハンドタオルで顔を覆っているではないですか。

一体、何が起こったのか。

それはその直後、タオルから顔を出した彼の表情を見て理解することになりました...。

「やべぇ、コイツ、完全にツボに入ってやがる...。」

 

そりゃ、落ち着いてみれば、大の大人が中に入って「ウギャーウギャ―」奇声をわめき続けているシーン。

それも、昨今公開されていた『猿の惑星』シリーズのようにモーションキャプチャーが発達している時代だったらまだしも、猿の姿がちゃっちいこと、このうえない。

(もちろん、50年前と考えればすごいんですが)

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出典:https://youtu.be/7keOHwygIqk


 

しかも、このシーン、音量が静かになるところが随所随所に差し挟まれていまして、もうこれは完全に

『笑ってはいけない2001年宇宙の旅

 

劇場が時折、静寂に包まれる中、必死に声を抑える小松。

しかし、ついに、そんな彼にトドメを刺すシーンがやってきました。

 

おもむろに地面から骨を拾う猿。

そして、流れる名曲『ツァラトゥストラはかく語りき』の調べ。

そのちゃっちな見た目と壮大な音楽とのギャップ。

映画史に残る名シーンといっても過言ではないそのシーンでさえ、もう、今の彼にとってはただの笑撃シーンへと変容していました。

 

「デー、デー、デー、デデーン!!」

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出典:https://youtu.be/hOlrxxPoyn4


完全に彼の腹筋は崩壊。

結果、持ってきたタオルに顔を埋めながら爆笑している彼の姿を見て、僕もつられて笑ってしまいました。

 

マジでスタンリー・キューブリック監督すいませんでした...。

 

その後、どうなったのかはお察しの通り。

中盤に差し挟まれる休憩時間には、

一体、あの黒い物体は何なんだ!

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出典:https://youtu.be/hOlrxxPoyn4


そもそも、ストーリーの意味が分からない!

などなど疑問が続出。

 

案の定、鑑賞後には

全く意味が分からず、終盤は終始眠かった

という意見まで...。笑

 

しかし、一方で「観ておいて良かった」という意見や、「めっちゃハマった」というメンバーもいたのは事実で...。

 

やはり問題作とは様々な意見を生み出すものなんだということを実感いたしました...。

 

あ、ちなみに僕の意見では、

もはや、本作はオーケストラのミュージックビデオだったのだと捉えています。(笑)

流れる映像のテーマはズバリ「生命の誕生」

 

そう思えば本作で登場する宇宙船”ディスカバリー号”の見た目、

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出典:https://youtu.be/hOlrxxPoyn4

 

そして、それが向かう先が真ん丸な惑星「木星」であったこと、

終盤に登場するトリップシーンと、ラストシーンの新たな生命体。

これらのことを思い出すと、なんだか本作は受精」の比喩のようにも感じられました。

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出典:https://youtu.be/hOlrxxPoyn4

 

てなわけで、

賛否両論を生んだ今回の観賞会、果たして次回の作品ではどうなってしまうのか?

 

今後も更新予定の関大映研のブログ、

是非、お楽しみに~!!